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ハンドボール人生の転機となったプレーオフ
【北國銀行OG・河田知美さん】

シーズンの年間王者を決める舞台、プレーオフ。男女計200試合以上におよぶレギュラーシーズンの上位4チームのみが出場権を得ることができる、名実ともに日本ハンドボール界における最高峰の舞台である。

 

一握りの選手しか立つことが出来ないプレーオフのコートには、そこを経験した者のみが知り得る感情や景色が

ある。今回は北國銀行の元選手で、現在はチームの広報として活動される河田知美さんに、

自身が経験したプレーオフを振り返ってもらった。

プレーオフに潜む独特の雰囲気

雰囲気は記憶に残っています。ありがたいことにユニフォームもいただけていたのですが、今までチームで頑張って

いた先輩たちに代わってベンチ入りメンバーに入るということもあって、そこに対する責任や重みも感じました。」

 

自身初となるプレーオフでは初戦を落とし3位、その翌年のプレーオフは2位という結果で終えた。

シュートミスなど、個人としても不完全燃焼のプレーとなったが、シーズン優勝を決める舞台には

やはり独特の雰囲気があるという。

 

「レギュラーシーズンとは明らかに雰囲気が違います。試合前後の演出面も一段と派手になりますし、

お客さんがたくさん入って会場の熱気も高まります。だからこそ、普段の試合とは違う緊張感があって、

それがプレーにも影響するのかもしれません。これまで何度もプレーオフを経験しましたが、

出場する度に特別感を感じていました。」

初優勝で味わった悔しさ

2014-15シーズン(第39回)に北國銀行はプレーオフFAINALで勝これまで河田さんは9度のプレーオフを経験。初めて

その舞台に立ったのは、大阪体育大学に在学中に内定選手として帯同した2012-13シーズン(第37回大会)である。「とにかく緊張した」と、河田さんは当時を振り返る。

 

「プレーオフ前のレギュラーシーズンにも出場していて、そのときの初得点などはしっかり覚えているのですが、最初のプレーオフの試合は緊張し過ぎていてあまり覚えていません(笑)。ただ、今までの試合では経験したことのない、

凄みのある利、河田さんにとって自身初優勝を遂げた。ホームである石川県·小松市での開催ということもあり、

この大会には特別な想いがあったという。

 

「ホームでの開催ということで、北國銀行を応援してくださる方もたくさん会場に来てくれました。試合展開は正直
良いものではなく、特に前半はチームとしてやりたいプレーが全くできていない状態でした。そんな中でも後半から

立て直して逆転で優勝できたことは、チームとしての強さを見せれたと思いますし、本当に嬉しかったです。」

 

チームとしては優勝という最高の結果を得た一方、個人としてはチームにあまり貢献できず悔しさを抱いたという。

そして、この大会が「ハンドボール人生における転機になった」と、河田さんは語る。

 

「シーズンの中で一番大事な舞台で思うようなプレーができず、チームに貢献することができなかったので、個人的にはとても悔しさの残る試合となりました。ですが、この悔しさを経験したからこそ、それまでよりもさらにチームや

ハンドボールに対してより真剣に向き合うことができたと思っているので、この大会が自分の中で転機になったと

感じています。」

北國銀行の強さは「当たり前の徹底」

自身にとって初優勝を遂げた2014-15シーズン(第39回)から2021-22シーズン(第46回)まで、北國銀行は圧倒的な強さで8連覇を達成。北國銀行の強さの理由を、昨年まで選手としてプレーしていた河田さんに聞いた。

 

「正直なところ、選手としてプレーしているときは『なぜなんだろうと』、自分でもよくわからない部分が

ありました(笑)。ですが、引退して一歩引いた目線からチームを見ていると、当たり前の基準がすごく高かったんだなと感じています。」

 

「チーム全体としてプレーの基準を上げていくこともそうですが、例えば練習の前後に個人として足りない部分を

補うトレーニングをすることを、みんながみんな当たり前のようにやっています。トップレベルのアスリートにとっては普通のことかもしれませんが、その普通を異常なくらい徹底してやり続けていることが、

個人としてもチームとしても、強さに繋がっているんじゃないかと思います。」

引退を発表して迎えた最後のプレーオフ

8連覇を達成する2021-22シーズン(第46回)のプレーオフ直前、河田さんはチームを通じて現役引退を発表した。

そんな中で迎えた最後のプレーオフの心境を振り返ってもらった。

 

「開幕前から引退は決めていたので、レギュラーシーズンを含めこのシーズンのどの瞬間を切り取っても、

自分にとっては最後の瞬間でした。プレーオフも当然最後の舞台でしたが、それを特別に感じ過ぎるとプレーにも

影響が出ると思ったので、なるべく気にしすぎず、ハンドボールを楽しもうという気持ちで臨みました。」

 

他競技を見ても、現役の最後を優勝で終えるアスリートは一握りである。引退を決めた上で手にした優勝は、

かけがえのない瞬間だったと河田さんは語る。

 

「実は当時はコンディションを崩していて、大会直前の全体練習にも入れないような状態でした。

本当に出場できるのかという不安もありましたが、実際にコートに立ったときは楽しくて仕方なかったです。

あの舞台に立てることの幸せを一段と強く感じましたし、たくさんのファンの方々に喜んでもらえて、

『このためにハンドボールしてるんだな』と、改めて感じることができました。」

選手たちの”想い”をぜひ会場で

これまで9度のプレーオフを経験し、チームの8連覇にも大きく貢献。日本代表としての経験も豊富な

河田さんにとって、プレーオフは選手にとってどんな舞台なのかを語ってもらった。

 

「どのチームも、プレーオフは”懸ける想い”みたいなものが、ほかの大会やレギュラーシーズンと違うというのは

感じています。日本代表の試合もまた違った特別感がありますが、

やはり長いシーズンを戦い抜いてきた最後の舞台になるので、それぞれのチームや選手の想いが凝縮した試合に

なります。だからこそ、最後にみんなで笑いたいという気持ちが一番強く出る大会になると思っています。」

 

選手たちの想いが交差する舞台がプレーオフであるという。その舞台で様々な経験をしてきた河田さんから、

プレーオフに進出する·進出を目指す選手たちへ向けて、メッセージを送ってもらった。

 

「プレーオフは、普段の試合では絶対に感じることのできない特別感を味わえる舞台です。選手としてその舞台に

立てることは本当に輝かしいことですし、そこで勝つことの喜びをぜひ知ってもらいたいです。

プレーオフに出場するため、優勝するためには日々の行動の積み重ねが重要になってくるので、限られた選手生活、

仲間との時間を大切にしながら戦ってほしいなと思います。」

 

最後に河田さんからハンドボールファンの方々へ、プレーオフの見所を含めたメッセージをいただいた。

 

「日本ハンドボール界の最高峰の試合を、できる限り会場で味わってほしいなと、元選手としても

チームスタッフとしても強く思っています。選手たちはプレーオフで勝つために1年間頑張ってきているので、

『ハンドボールっていいな』ということが、目の前の選手たちから伝わってくるはずです。そのようなことも含めて、プレーオフが素晴らしい空間になることを私は確信しているので、ぜひ会場に足を運んでいただければと思います。」

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